（中川原）

　本社は、久志伊羅山に鎮座し、奇稲田姫命・天照大神・豊受大神を祀っている。治承四年（一一八〇年）、高倉天皇から正一位を授けられた畠山氏の祈願所として、三十八石の社領を寄進された等の社伝がある。

　明治七年、「久志伊羅山社」と改めた。同十一年、「延喜式内久志伊奈太伎比咩神社」と復称した。これが後年、徳田町に鎮座する同名の「久志伊奈太伎比咩神社」と社格論争となる。

　三月二十二日、「権現はん」が立ち寄る。中川原村の人たちが、神輿や社旗などを細口の獅子ヶ鼻まで担いでいくのが慣例であった。

　また、高井地区は、オシャカキ神輿を担ぐ役目があった。氏子でもない高井地区が、なぜ担当していたのか不思議であった。円山義一氏の著書『横向きに座る大国主神』に「クジラとは、鷹の古名である」とあり、高井地区が鷹匠の集団であったことを考えると納得できる。

　　　　　　　　　　　（第３３８号　抜粋）